8, November, 2020
コロナ禍で行われた東京六大学野球秋のリーグ戦。11月7日(土)8日(日)早慶戦が行われました。伝統の早慶戦は必ずリーグ戦の最終節で行われます。今年はコロナ禍での変則的な内容でしたが、東京六大学野球は実施されました。
慶應義塾大学が1勝すれば優勝
早稲田大学は1勝1敗か1勝1分で優勝という両校に優勝のチャンスがある早慶戦でしたが、早稲田大学が劇的な優勝で幕切れとなりました。
- 「コロナ禍」の六大学野球
- 優勝をかけた早慶戦
- ドラフト一位エース対決
- 蛭間選手の2試合連続決勝弾
- 小宮山監督の想い
「コロナ禍」の東京六大学野球
通常の東京六大学野球は総当たり戦で土曜日が第1試合、2勝した時点で勝点1がもらえる勝点制です。土日で連勝したら勝点1を獲得して一節が終了します。土日で1勝1敗の場合は月曜日に3試合目を行い、3試合目が引き分けの場合は火曜日に4試合目とどちらかが2勝するまで実施されます。
今年は1週(1節)に2試合固定で行われ、1勝で1ポイント、引き分けで0.5ポイントの勝点制という通常と異なる変則的な方法で実施されました。
プロ野球と同様に観客も上限5000人からはじまり、10月17日以降は10000人、早慶戦は12000人を上限に行われました。
そして今年は神宮大会(全国大会のような大学日本一を決める大会)は中止のため4年生は最後の大会となりました。
2020秋季リーグ戦結果(東京六大学野球連盟公式サイト)
優勝をかけた早慶戦
今年の早慶戦は久しぶりに結果次第でどちらにも優勝の可能性のある早慶戦でした。早慶戦に至るまでの成績は以下の通りです。
慶應義塾大学
東大と立教に2勝、明治と法政には1勝1分けの6勝2分
勝点が 7.0
早稲田大学
東大に2勝、他の大学には全て1勝1分の5勝3分で
勝点が 6.5
わずか0.5ポイント差なので、1勝すれば1ポイント入るため、早慶戦の結果次第で優勝が決まる一節となりました。
ドラフト1位 エース対決
もう一つ話題がありました。直前に行われたプロ野球のドラフト会議で両校のエースが1位指名を受けました。
早稲田大学 早川投手 東北楽天ゴールデンイーグルス1位指名
慶応義塾大学 木澤投手 東京ヤクルトスワローズ1位指名
早川投手は木更津総合高校3年生の時すでにドラフト候補で注目される投手でしたが、早稲田大学に進学して3年生までは目立った活躍はありませんでした。しかし4年生になり球威が増し、安定した投球で早稲田無敗の原動力となりました。
木澤くんは慶應義塾高校出身で早川投手と同様3年生までは驚くべき成績は残していません。ただMax155キロの速球にスライダー、カットボール、カーブ、チェンジアップと多彩に変化球も投げられます。4年生の秋のリーグ戦で5勝負けなしで早慶戦に臨んでいます。
蛭間選手の2試合連続の決勝ホームラン
早慶戦でヒーローが現れました。
2年生で8番打者の蛭間君(浦和学院)
2年生で早稲田のレギュラーに選出されるだけでもすごいのですが、早慶戦という大舞台で大活躍しました。
<1試合目>
エース同士の対決で7回表に慶應が1-1に追いつきます。
追いつかれたその裏に蛭間選手が木澤投手から2ランホームランを打ち、これが決勝点となり、8回、9回を早川投手が抑えて早稲田が先勝しました。
この時点で、早稲田の勝点が7.5 慶應が7.0 と早稲田がリードして、優勝の行方は最終戦に持ち越しとなります。
<2試合目>
4回まで慶應が2-1とリードして両校継投で最終回まで一点差の接戦。
9回表慶應は投手をエース木澤くんに交代してツーアウト、あと一人、アウト一つで優勝というところまで早稲田を追い詰めます。
ここで熊田くんがヒットで出塁し、昨日木澤投手からホームランを打っている蛭間選手の打順。慶應の堀井監督はここでピッチャーを生井くんに交代します。そしてその初球をなんとなんとバックスクリーンまで運ぶ大逆転ホームラン。起死回生の一打で3-2と逆転しその裏を早川投手が抑えて早稲田大学は優勝となりました。
打席に入る前、小宮山監督に「狙い球は外角のストレート」だと確認し合ったのに、真ん中に入るスライダー(しかも初球)に合わせてホームランにしてしまいました。そんな打撃センスを見せつける豪快な一打でした。
彼に指導をしたバッティングコーチの徳武さん(82歳)もスタンドで涙したそうです。石井連蔵さんに熱血指導を受けた徳武さんが受け継いだ早稲田の伝統がまた引き継がれた瞬間でもありました。昔のような指導ができない中で、どうやって若い選手のポテンシャルを引き出すのかは今時の指導者の共通の課題だと思います。そんな課題をひとつクリアしてくれた一瞬でもあります。蛭間君の今後の活躍が楽しみです。
小宮山監督の想い
早稲田大学卒業後、千葉ロッテ、メジャーリーグ、横浜で活躍した小宮山監督が優勝監督インタビューで「長い野球人生で一番感動しました」と語った試合でした。
今秋は1960年秋の「早慶6連戦」から60年。「伝説の名勝負」として語り継がれる早慶戦で当時両校を率いた慶大・前田祐吉氏と早大・石井連藏氏が野球殿堂入りしました。教え子でもある小宮山監督はインタビュアーからそのことに触れられるとしばらく涙で言葉が出ませんでした。厳しい指導で有名だった石井さん。その墓前に良い報告ができると男泣き。私ももらい泣き。
また、小宮山監督はこうも言っています。
たまたま早稲田が最後優勝を勝ち取った形になりましたが、新型コロナに感染させない対策を徹底し、最後まで大会を続けることができたことは、全ての大学、関係者全員の勝利であると。
これからも野球が続けられるようにみんなで頑張っていきたいという想いがあふれていました。